先週のビデオで、ハワイ州が、バケーションレンタル(以下バケレン)を禁止する権限をハワイの五つの郡に与える法案を可決したという話をしました。これによって、マウイ郡は、火災で家を失った人たちがホテルから住宅に移ることができるように、この法律を行使することができます。今日は、マウイ島やその他の島のバケレンの現状がどうなのか、今年3月の統計をご報告します。
この情報とデータは、24年4月25日に発表された州ビジネス経済開発観光局(Department of Business Economic Development and Tourism、略してDBEDT)の2024年3月ハワイバケレン実績報告書の一部です。特定のバケレンに関する法律は郡ごとに異なりますが、DBEDT レポートでは、合法のものと違法なものの区別はしていません。
マウイ島 | 2024年3月 | 2023年比 | 2019年比 |
供給 | 225,900泊 | +9.2% | +1.2% |
需要 | 140,600泊 | -2.0% | -24.2% |
稼働率 | 62.2% | -7.1% | -20.8% |
ADR | $424 | +1.3% | +54.0% |
ホテルADR | $581 | 稼働率 | 69.1% |
マウイ島のバケレンユニットの供給は、2023年8月8日の山火事の影響がまだ続いています。3月のマウイ郡バケレンの供給は延べ225,900泊(2023年比+9.2%、2019年比+1.2%)、ユニット需要は140,600泊(2023年比-2.0%、2019年比-24.2%)でした。
稼働率は62.2% (2023年比-7.1%、2019年比-20.8%)、平均客室単価(Average Daily Rate、略してADR)は$424 (2023年比+1.3%、2019年比+54.0%)でした。2024 年 3 月のマウイ郡のホテルは、平均客室単価が$581、稼働率が69.1% でした。以下のグラフは、棒グラフは色が濃い順に2024年、2023年、2019年のバケレンのADR、線グラフは同年の稼働率です。
ハワイ州 | 2024年3月 | 2023年比 | 2019年比 |
供給 | 783,200泊 | +13.9% | +1.5% |
需要 | 449,500泊 | +4.3% | -25.9% |
稼働率 | 57.4% | -5.3% | -21.2% |
ADR | $337 | +3.5% | +57.8% |
ホテルADR | $384 |
ハワイ全土のバケレンは、供給、ADR、需要が増加しており、2023年3月と比較して2024年3月の稼働率は低下しました。報告によると、パンデミック前の2019年3月と比較して、2024年3月のADRとバケレンの供給は高かったものの、賃貸需要と稼働率は減少しています。
他島の統計
オアフ島 | 2024年3月 | 2023年比 | 2019年比 |
供給 | 227,000泊 | +12.2% | -16.7% |
需要 | 131,000泊 | +6.4% | -37.0% |
稼働率 | 57.7% | -3.1% | -18.6% |
ADR | $265 | +8.2% | +65.7% |
ホテルADR | $284 | 稼働率 | 78.7% |
バケレン供給は、2019年と比べると、州全体ではわずかに増えているものの、オアフ島では16.7%も減っています。これはバケレン法改正が原因だと思われますが、ここ1年は12.2%も挽回しています。改正されたバケレン法が裁判で負け、再び短期賃貸が増えたのかもしれません。需要に関しても同じで、2023年と比べると州全体より増えていますが、2019年と比べると37%も減っています。ADRが2019年と比べて65.7%も上がったのは、驚きです。
ハワイ島 | 2024年3月 | 2023年比 | 2019年比 |
供給 | 201,200泊 | +16.4% | +16.8% |
需要 | 106,800泊 | +2.5% | -16.0% |
稼働率 | 53.1% | -6.8% | -20.7% |
ADR | $271 | +6.8% | +57.4% |
ホテルADR | $475 | 稼働率 | 67.7% |
ハワイ島の供給は、23年比が16.4%増、19年比が16.8%増ですから、2019年から23年まではほとんど増えておらず、この1年で急増したということになります。これは、コロナ後の需要増加を狙ったものと思われますが、需要はまだ回復しておらず、コロナ前と比べて16%減です。
カウアイ島 | 2024年3月 | 2023年比 | 2019年比 |
供給 | 129,100泊 | +22.0% | +24.9% |
需要 | 71,200泊 | +18.0% | -17.3% |
稼働率 | 55.1% | -1.9% | -28.2% |
ADR | $398 | +0.9% | +46.4% |
ホテルADR | $444 | 稼働率 | 73.3% |
カウアイ島の供給も、ハワイ島同様、この1年で急増しました。ADRは、他の島ほど伸びていませんが、それでも46.4%増です。
全体的に見て言えることは、稼働率が下がっており、特にパンデミック前の19年と比べるとかなり低いです。その一つの理由は、供給が増えているからです。しかし、空室が増えているにもかかわらず、ADRはかなり上がっています。特にオアフ島はコロナ前と比べて65.7%も上がっています。ホテルのADRが上がっているので、ホテルより安ければ予約は入るということなのでしょうか。
もう一つ考えられる可能性があります。この報告ではわかりませんが、オアフ島の場合、30日以上のバケレンが統計に含まれているかどうかが明確ではありません。オアフ島では、一部のリゾート地域を除き、最低30日貸さなければなりません。これは、一般の住宅地域をオーバーツアリズムから守るための法律です。30日の賃貸は、観光目的以外で借りる人もいますが、その多くはバケレンです。
短期バケレンと言うと、30日未満を指しますが、30日以上のバケレンもこの統計に含まれていると思われます。その場合、実際に30日間泊まる人はほとんどいません。2~3週間泊まれば、ホテルよりは安くなります。
仮に15日泊まった場合、その月は稼働率50%とみなされるのか、100%とみなされるのかに関する明確な記述がありません。もしこれが50%と計算されているのであれば、それも稼働率が低い一つの理由かもしれません。また、オアフはバケレンとホテルのADRの差が少ないですが、100%とみなされるのであれば、この差はもっと広がるはずです。
この統計でどう計算されているかにかかわらず、オアフ島のバケレンの物理的空室期間が長く、効率的に運用されていないことは明らかです。30日レンタルは、ホテルよりは安く、長期賃貸よりは収益が多いので成り立つビジネスです。しかし、何らかの方法でバケレン物件を減らし、その分バケレン物件がフル稼働できるようにすれば、住宅の在庫は増え、住宅難の緩和につながります。
ただし、これはフル稼働する物件の近隣に住む人にとっては迷惑です。短期バケレンは主にリゾート地域にありますので、この心配はありません。リゾート地域以外は、オーナーが実際に住んでいる物件の一部を貸す場合のみバケレンを許可するという案があります。その場合は30日未満でもよいことにすればよいかもしれません。利用者はオーナーに配慮しなければなりませんし、オーナーも宿泊客が騒ぐことを許しませんので、近所迷惑になる可能性は低いと思いますが、どうでしょうか。
このブログを動画でチェック