私は時折ホノルルのオープンハウスの様子をビデオで紹介していますが、その時に、ネットの家賃予想がいくらかを紹介しています。私が使っているサイトは、一般人が戸建やアパートを借りるときに、自分が借りたいと思っている住宅の家賃を査定するためのものです。自分で使っていながらこんなことを言うのもなんですが、正直、当てにはなりません。個々の物件を比較する項目があまりにも少ないからです。
居住系物件に投資しているプライベートエクイティーや不動産管理会社などが使っているAI査定は、もっと本格的で、正確な査定ができます。プライベートエクイティーとは、通常、未公開株に投資する会社ですが、最近戸建に投資することが増えています。
また、物件自体を見るだけでなく、イールド・マネージメントと言って、空室の度合いに応じて家賃を調整しています。飛行機のチケット代同様、空室が多いときは安めに、少ないときは高めに設定するのです。大きなアパートであれば、同じアパートの同じ部屋であっても、毎日のように家賃が変わります。
テクノロジーが進めば、こうなるのは当たり前だと思うかもしれませんが、これは独占禁止法違反だと言うことで問題になっています。なぜこれが独禁法違反になるのか、ほとんどの方はピンとこないと思いますが、なぜなのでしょう。
リアルページやヤーディがこのようなAI査定の代表的なプログラムです。自動的に家賃を設定するようになっていて、マニュアルで家賃を設定し直すには手間がかかります。これらのAIのアルゴリズムは、私が使っているような一般向けと違い、家賃収入を最大化することが目的です。ということは、自然と高めに設定されると言うことです。
するとどうなるでしょう。ほとんどの不動産管理会社や自社物件の管理部署がこのようなAIを使って家賃設定をすれば、消費者は、個人投資家の小さな物件にでも当たらない限り、AIが決めた高めの家賃を払うことになります。各管理会社やオーナーが実際に談合をしなくても、暗黙の了解があるとみなされるのです。
米国の独占禁止法の特徴は、独占しているかどうかより、それによって消費者が支払う価格が上がるかどうかが決め手になります。一年前のリアルページの訴訟では、違反とされませんでしたが、その主な根拠は、まだテクノロジーが新しく、社会的影響を見分けることができないというものでした。また、10~20%の割合で、オーナーや管理士が査定額と異なる家賃設定をするという統計があり、それも違反にならなかった理由の一つでした。
しかし、2024年12月のヤーディの裁判では、違反との判決が出ました。管理している物件の情報をヤーディに提供してビッグデータとして使ってもらうのは、他社も同じことをしてくれるに違いないと理解しているからなのです。この暗黙の了解が談合とみなされたわけです。リアルページも、新しく司法省に訴えられ、示談にしない限り、負けると予想されています。
これからどうなるのでしょう。それぞれのオーナーが独自のデータを使えば、論理的には談合してることにならないはずですが、それだけのデータを持っているのは、プライベートエクイティーくらいです。また、アルゴリズムの透明性が求められています。AIがブラックボックス化しているからです。透明性の問題は、ほかの業界にも波及するかもしれません。
オアフ島でも、西オアフはプライベートエクイティーが所有している戸建が多く、家賃を釣り上げているそうです。将来の動向が注目されます。
(ハワイ・リアルターズ・ポッドキャストより)
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