建て替えずに価値を高める「部分改修」という考え方
ハワイで不動産投資を考えるとき、多くの人はワイキキのコンドミニアムや高級住宅を思い浮かべるかもしれません。しかし、投資という観点では、築年数の古いアパートにも独特の魅力があります。特に最近注目したいのが、
建物を全面的に建て替えるのではなく、必要な部分だけを改修しながら収益力を高めていく方法
です。建築費も金利も高い現在のハワイでは、この考え方はかなり合理的です。
39戸の築古アパートで始まった再生計画
ホノルルのモイリイリ地区に、1961年築、39戸の低層アパートがあります。新しい所有者はこの物件を約630万ドルで取得しました。建物はかなり老朽化しており、共用部や設備には長年の傷みが見られました。取得当初は、建物全体を大規模に改修し、場合によっては入居者にも退去してもらうことが想定されていました。しかし、その後に各住戸の状態や入居者の事情を確認した結果、方針は変わりました。全面改修ではなく、
空いている部屋を中心に改修し、現在入居している部屋はできる限りそのまま残す
という方法です。この物件では、15〜20戸ほどの空室があり、それらを改修して再び賃貸市場に戻す計画が進められています。改修済みのスタジオについては、月額1,700ドル程度で貸し出す計画とされています。
既存入居者は残しつつ、家賃を段階的に調整
この方法の特徴は、現在の入居者をすぐに退去させないことです。既存入居者については、急激に市場家賃まで引き上げるのではなく、段階的な家賃調整が計画されています。スタジオ(ワンルーム)は月1,100ドル、1ベッドルームは月1,300ドルから始め、その後さらに少しずつ引き上げる方針です。つまり、
既存入居者からは安定した家賃収入を得ながら、空室を改修して新規入居者からより高い家賃を取る
という形です。この方法なら、物件全体を一気に空室にする必要がなく、収入を維持しながら改修を進めることができます。
ハワイでは「全部新しくする」ことが最善とは限らない
ハワイでは建築費が非常に高く、資材費や人件費も上昇しています。さらに金利が高い状態では、大規模な建て替えや全面改修を行うと、多額の借入が必要になります。借入が増えれば、当然ながら毎月の返済負担も増えます。その結果、投資を成立させるためには高い家賃を設定せざるを得ません。一方で、必要な部分だけを改修すれば、
改修費を抑える
→ 借入額を抑える
→ 金利負担を抑える
→ 家賃を極端に上げなくても収益を確保しやすい
という構造になります。今回のケースでも、全面改修を避けることで借入負担を抑え、それによって高い家賃を必要としない運営を目指しています。
空室は「悪いこと」とは限らない
不動産投資では、一般的に空室率が高い物件は敬遠されます。しかし、築古物件の再生という視点では、空室があることがむしろメリットになる場合があります。空室であれば、
- 入居者との退去交渉が不要
- すぐに改修工事に入れる
- 改修後に新しい家賃を設定できる
- 工事中も他の入居者から家賃収入を得られる
という利点があります。特に、現在の家賃が市場価格よりかなり低い物件では、
空室を少しずつ改修して市場家賃に近づける
という方法が、非常に現実的です。
既存入居者を残すことにも投資上のメリットがある
入居者を残すことは、単に社会的に配慮しているというだけではありません。投資家にとっても、
- 入居募集費用を抑えられる
- 空室期間を減らせる
- キャッシュフローを維持できる
- 全面的な改修を急がなくて済む
というメリットがあります。もちろん、既存入居者の家賃が市場よりかなり低ければ、短期的な収益は抑えられます。しかし、
安定した家賃収入と、将来的な賃料上昇余地を両立させる
という考え方もできます。
日本人投資家が築古アパートを見るときのポイント
ハワイの築古物件を見る場合、単純に「古いから安い」「古いから危険」と考えるのではなく、次の点を見ることが重要です。
現在家賃と市場家賃の差
現在の入居者がかなり安い家賃を払っている場合、将来的な収益改善余地があります。
空室率
空室が多い物件は、改修によるValue-Addの余地が大きい可能性があります。
修繕の先送り
配管、電気設備、屋根、手すり、エレベーターなどにどれだけ修繕費が必要かを確認する必要があります。この物件でも、共用部の手すりや配管などの老朽化が問題になっていました。
土地と建物の価格配分
日本の法人投資家の場合、減価償却を重視するケースもあります。その場合は、
購入価格のうち、どれだけが建物価値として認識できるか
が重要です。土地は減価償却できないため、取得価格に占める建物割合が大きい物件の方が、税務上有利になる可能性があります。
将来の再開発価値
今すぐ建て替えなくても、長期的に見て土地の再開発価値が高ければ、出口戦略の選択肢になります。
「最大の家賃」を取ることだけが投資ではない
不動産投資というと、
できるだけ高く貸すこと
が最優先と思われがちです。しかし実際には、
- 改修費
- 借入金額
- 金利
- 空室率
- 入居者の安定性
- 管理コスト
を総合的に考える必要があります。場合によっては、
全面改修をせず、既存入居者を残し、空室だけを改善する方が投資効率が高い
こともあります。特に建築費の高いハワイでは、
「どれだけ新しくするか」ではなく、「どこまで直せば十分か」
という判断が重要です。
まとめ
ハワイの築古アパート投資では、
買って壊して建て替える
という方法だけが正解ではありません。むしろ、
既存建物を活用し、必要な部分だけ改修しながらNOIを改善する
という方法が、これからますます重要になる可能性があります。築古物件には当然リスクがあります。しかし、
- 良い立地
- 市場より低い家賃
- 改修可能な空室
- 十分に使える建物
- 適切な取得価格
という条件がそろえば、古い物件だからこそ生まれる投資機会もあります。ハワイの不動産投資では、表面利回りだけでなく、
「今ある建物をどう生かして価値を高めるか」
という視点が、これまで以上に重要になってきています。