住宅建築の手法は、昔も今も、それほど変わりありません。身の回りの多くのものは、機械やオートメーションで製造されていますが、戸建は未だに木と釘で人が建てています。3Dプリンティングをブログで取り上げたこともありますが、量産化は遠い先の話です。部屋ごとに工場で作って現場で組み立てるモジュラー工法は、ハワイでも取り入れられましたが、輸送費がかかり、メインランドほど安くはできません。今日は、より現実的な代替工法として、プレハブ建築について解説します。
プレハブとは?
プレハブと言うと、工事現場の隅っこに建てられた6畳ほどの簡易事務所みたいなものを思い浮かべる方も多いでしょう。しかし、実際には通常の工法と見分けがつかない、いや通常の工法より良いものさえあります。このブログでご紹介するSIPの建材は、2枚のベニアのような板の間に、凝縮された発泡スチロールを挟んだものです。加工木材協会の調査によると、従来の木材より構造的に優れているそうです。
最も大きな違いは、設計図に基づいて予め正確な大きさに切られて送られてきた建材を、現場で組み立てるだけですので、建物自体は数日で完成するということです。輸送費はかかりますが、モジュラーのような室内空間がないので、通常の建材の輸送費とそう変わりません。
価格は?
ハワイでは、SIPシステムズ・ハワイと言う会社がこの工法を使っています。ライダー・レヴィット・バックナール建築費用インジケーターによると、ハワイの建築費は、平方フィートあたり$295~785です。平米だと、$3,175~8,450です。そのほぼ中央値の$540だとすると、平均的な1,800平方フィート(167平米)の戸建ての建築費は、百万ドル近くになります。パンデミックで、全国的に建材価格は23%上昇しましたが、ハワイはその上に輸送費がかかります。最近のウッドショックで、火災保険を見直した方が良い方も多いのではないかと思います。
SIPが今建てているカイムキの物件は、その約倍の3,500平方フィート(325平米)で、平方フィート当たりの工費は約$300、全部で約$110万の予算です。建材は安いだけでなく、通常のものより省エネです。通常の建築費の半分近い値段ですが、人件費が半分以下になることが最大の理由です。通常、延べ1,200~1,500時間かかりますが、プレハブだと344時間。人件費が約$5万節約できます。ニューヨークとカリフォルニアに次いで持ち家率の低いハワイ(58%)の住宅難緩和に役立ちそうです。
これに反対するのが労働組合です。躯体の建築に一週間もかからないのでは、失業する人も出るだろうし、賃金も下がるというのです。ちなみに、建築工事の平均賃金は、時給$45です。それに対して、SIP システムズは、ハワイには2025年までに25,000戸の住宅が必要だと言われているので、当分失業を心配する必要はないと述べています。
実例
プレハブは、質や見栄えが悪いという印象を持つ人も多いでしょう。ゼイン・ワトソンさんは、2020年にホノルルからワシントン州に引っ越し、300平米の3LDKのプレハブ住宅を建てましたが、メキシコに引っ越すことになり、現在、$219.5万で売りに出しています。省エネで空調を使うことがなく、しかもとても静かだとか。敷地が森の中で、11,200平米もあり、静かなのは当然では…?ちなみに、固定資産税評価額を調べたところ、建物比率は60%でした。
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