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正直不動産第1話解説:サブリース

 NHKで、10回シリーズ「正直不動産」が4月5日火曜日から始まりました。コメディーですが、不動産取引に関する注釈もあり、不動産に興味のある方にはお勧めです。第1話で取り扱われたトピックは、サブリースでした。これは、以前クローズアップ現代でも取り上げられたことがあり、詐欺まがいの商法で被害を被った方が多くおられます。全話を解説するかどうかはまだ見ていないのでわかりませんが、今日はその1回目です。

 まず、ドラマを簡単にご紹介しましょう。登坂不動産で営業トップの永瀬財地(山下智久)は、詐欺まがいの商法で成績を上げてきました。ある親子が、お父さんの引退を機に永瀬に相談に来て、アパート建築を勧めます。登坂不動産がそのアパートをサブリースし、30年家賃を保証するから、心配することはないと言って契約をするのですが、契約書には多くの落とし穴が…。ところが、ある日突然、永瀬はたたりで嘘がつけなくなり、本当のことを言ってしまって、この契約がお流れになるのです。

 本題に入る前に、まず言葉の説明から。サブリースと言うのは、不動産管理会社がアパートやマンションを1棟全部借り上げて、一定の家賃収入を地主に保証するものです。実は、これは和製英語で、英語ではサブリースではなく、マスターリースです。サブリースと言うのは、いわゆる又貸しで、それは、管理会社が個々の入居者と結ぶ契約であり、大家と結ぶ契約は、英語ではマスターリースです。

米国にはこの制度はほとんどありません。日本人は、リスク許容度が低く、保証があるから安心だと思って、契約してしまうのです。リスクを負いたくないので、利回りは低くても良いというのはいいかもしれませんが、実際は騙されていることが良くあるのです。

 第1話で問題とされた点は、サブリース契約の中にある家賃値上げの協議です。原則上げていくという契約内容ですが、これは原則ですので、協議の結果下がることもありです。実際、よほど良い地域でない限り、家賃が上がり続ける物件などありません。また、30年保証と言っても、解約可能になっています。管理会社が、保証した家賃を支払うことができなくなれば、解約できるという条項が含まれていますが、この親子はそれをちゃんと読んでないのです。

 クローズアップ現代でも取り上げられましたが、サブリースの問題は他にもあります。例えば、アパートの保守を系列会社でしなければならないことが良くあります。他社に頼むことができませんので、保守費用は管理会社の言いなり。保守を断ったり、他社に頼んだりすると、解約になります。親切で熱心な若い営業マンを信じて、田舎にアパートを建てて困り果てた老夫婦のインタビューが印象的でした。

 こういうことは、重要事項説明の中に含まれるはずではないかと思われる方も多いでしょう。戸建てや分譲マンションの売買においては、買主は消費者です。重要事項説明は、消費者を守るためにあります。しかし、アパート建築やサブリース契約においては、両者が事業主であり、家主は消費者ではありません。しかし、本人は不動産に関して無知ですので、自分は消費者だという感覚から抜け切れず、業者と対等に渡り歩かなければならないという自覚がないのでしょう。

 最後に、第1話には、若い女性ばかりを入居させて嫌がらせをし、ほとんどの入居者が数か月で退去するという話が出てきます。そうすると、敷金や礼金が頻繁に入ってくるからです。このようなことは、実際にあるかもしれませんが、嫌がらせの内容次第では犯罪となり、よくある問題ではないと思います。

 しかし、サブリースは一般的です。全てのサブリースが詐欺まがいだとは言いませんが、クローズアップ現代でも取り上げられたのも、詐欺商法が横行していたからです。これは、珍しい「事件」をコメディーのネタにしたのではありません。永瀬が客の親子のお父さんに言ったセリフ、「リスクがないわけないだろ!不動産を甘く見るな」は、視聴者に語り掛けている言葉です。この番組が、不動産リタラシーの向上につながることを期待します。

 ところで、サブリースがなぜ米国にはないのか、考えてみましょう。土地をリースする場合は、その上に何を建ててどのように経営しようと、全て賃借人がリスクを負います。地主にリスクが全くないわけではありませんが、限られており、毎月リース料が支払われます。米国にも、日本ほどではありませんが、土地のリースはあります。

 サブリースは、自分が経営しなくてよく、収入が保証されているという点は似ています。しかし、土地だけでなく建物も大家のものであるにもかかわらず、経営はすべて管理会社に任せているのです。仮に家賃収入が契約通りにあったとしても、どれだけの経費を使うかは管理会社次第で、管理会社の善意に頼っているのです。投資家のオーナーは、不動産投資をある程度知っている方が多いですが、土地を相続した地主さんは、こういうことにうとい方が多いのでしょう。特にそのような方は、この番組を見られることをお勧めします。

 私の松山の実家は、60年前に両親が購入した建売で、当時は田畑に囲まれていました。今は、耕作地はほとんど残っておらず、戸建てやアパートが建ち並んでいます。市内から遠過ぎもなく、近過ぎもなく、高級ではありませんが、まずまずの住宅地です。近所には、ユニクロ、しまむら、大型家電店などがあり、スーパーも1キロ以内に6件もあります。

 近所には、クローズアップ現代でも取り上げられた✖✖不動産のアパートが建ち並んでいます。犬も歩けば✖✖アパートにあたる!あまりに多いので、✖✖不動産のサイトを見たところ、何とうちの近所、半径300mほどの場所に30棟以上ありました。これは、空室あるいは最近決まった部屋のあるアパートしか載っていませんので、実際はもっとあるのでしょう。

 それらのアパートに計40の空室があるのですが、空室が4部屋もあるアパートがありましたので、全部で何戸あるのか見に行きました。6部屋と8部屋の棟があり、8部屋の棟の半分が空室です。築21年、55~64平米で、家賃は46,000~48,000円。松山は県庁所在地の中では家賃が最も低い市だと聞きましたが、確かに安い。この辺は場所がいいので、クローズアップ現代で見た老夫婦ほど困っているとは思えませんが、果たして儲かっているのか?

 もう昔の話ですが、弊社の河野社長が✖✖不動産の建築現場に通りかかったときの話です。日本のアパートは、外壁のタイル、と言ってもタイルのように見える鉄板が張ってあり、長持ちしてきれいです。このタイルの欠点は、タイルの下がどうなっているかを隠すことができるということです。請け負った建築業者は、使うべき木材の半分くらいしか使ってなかったそうです。階段の基礎も、本来ならコンクリートを敷くべきですが、ブロックを並べただけ。これでは雨水で浸食して階段が宙ぶらりんになります。

 おせっかいの河野社長が注意したところ、安く請け負っているので、これ以上のことはできないと言われたとのこと。もう二度と✖✖不動産の仕事はしないと、ぶつぶつ言いながら工事をしていたそうです。松山は、家賃だけでなく建築費も安いそうですが、もしかして手を抜いているのではないかと、心配になりますね。

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正直不動産第1話解説:サブリース
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