なぜギャンブルをすると負けるのか
博打と投資の違いをはっきり認識していない方がいますが、簡単に言うと、博打は負けるようになっている、投資は儲かるようになっている、というのがその根本的な違いでしょうか。なぜ博打をすると負けるのか、そんなことはあまり考えたことがないかもしれませんが、三つの理由があると思います。
理由その1:ギャンブルはディーラー有利に作られている
一つ目の理由は、カジノのどのゲームを取ってみても、ディーラー有利に作られているということです。私は、パソコンが出始めた80年代の中ごろ、興味を持って、何かプログラムを作ってみようと思い立ちました。簡単なゲームを作ってみようかと考え、ブラックジャックをプログラムしました。まず、どういう状況でどうプレーしたらよいかを割り出す計算をすべてコンピューターでさせて、それをプログラムしてコンピューターにゲームをさせてみました。すると、プレヤーが勝つのは49.6%、ディーラーは50.4%という結果が出たのです。50/50にかなり近いですが、長い間プレーしていると、必ずディーラーが勝つようにできているわけです。
理由その2:負け始めると掛け金を減らす
ギャンブルがディーラー有利にできているということは当たり前なのですが、それ以外にも理由があるのです。ギャンブルで負ける二つ目の理由は、プレヤーは、勝っているときは大金をかけるが、負け始めると掛金を減らす傾向があります。例えば、100ドル持ってカジノに行ったとしましょう。最初に20ドルかけて負けたとします。残りは$80ですので、慎重になって、掛金を$10に減らします。勝つと$90に増えました。一勝一敗なのに、お金は減ってしまったのです。
この原理を逆利用してみたらどうでしょう。まず$1かけて、負けて$99に減ったとしましょう。すると、次は倍の$2かけます。負けると$97になりますが、勝つと$101になります。また負けた場合は次に$4かけ、負けるたびに掛金を倍にして行くのです。そうすると、何回負けたかに関係なく、勝つと必ず元の額より$1増えているはずなのです。
これは良いことを聞いたと思って、実行しないでください。というのは、連敗が続くと、$100くらいの元手はすぐになくなってしまうからです。6連敗すると$37に減り、掛金を倍にすることができなくなります。6連敗する可能性は64分の1ですので、何十回かプレーすると、その可能性は十分にあります。元手を千ドルや1万ドルに増やしたくらいでは、決して安心できません。百万ドルもあれば十分だと思うかもしれませんが、それだけお金があれば、勝つたびに$1しか増えないギャンブルをするより、定期預金でもした方がましでしょう。
理由その3:ディーラーには財力がある
三つ目の理由は、ディーラーとプレヤーの財力の違いです。プレヤーは、お金が無くなったらプレーできなくなりますが、ディーラーのお金が無くなるということは現実的にありません。つまり、プレヤーは、勝っていてもプレーし続ければ負ける可能性がありますが、負けてお金が無くなってしまえば、プレーできなくなりますので、プレーを続けて挽回することはできないのです。
ギャンブルと投資の違い
これらの事柄から学べることはあるでしょうか。ギャンブルで負ける最初の理由に似ているのが、為替です。投資だと思われがちなFX(外国為替)は、実は博打なのです。純粋に偶然の結果でしかない博打に比べ、将来の動向をある程度予想できるという点が異なりますが、予想通りにいかないことは多々あります。仮に勝てる可能性が50%だとしても、手数料などを考えれば、ブラックジャックと同様、プレヤーにとって少し不利です。
ギャンブルはどちらかが負け、どちらかが勝つようにできています。これをゼロ・サム・ゲームと言い、誰かが買った分だけ、誰かが負けるのです。サム(sum)とは和という意味で、全員の勝った額と負けた額を合わせるとゼロになるという意味です。しかし、投資は違います。投資にはいろいろな人が関与しますが、全員儲けることが可能です。つまり、ウィン・ウィンなのです。
ギャンブルと投資の共通点
ギャンブルで負ける二つ目の理由ですが、それに似たことを、投資でもする人がいます。私たちは、財産が増えると、一つの投資に使う額も増えていく傾向があります。極端な例ですが、いつも全財産を使って最大限の投資をしていると、失敗したときの打撃も最大限のものとなります。私の知り合いの不動産投資家が、リーマンショック前の景気の良い時代に、次々と転売して大きな物件を買って行ったのですが、リーマンショックで破産してしまいました。最後に買ったハワイの大きなホテルが自分の墓碑になった、と彼はつぶやいたそうです。
こうして、彼はプレーを続けることができなくなってしまいました。ギャンブルで負ける三つ目の理由です。彼は、またコツコツと働いて、元手を作るところから始めなければならなくなったのです。人は誰でも引退する時期が来ます。若い時は、まだ働いてお金を稼いでプレーを再開することができますので、少々のリスクを負うのは良いでしょう。しかし、プレーできる現役の期間が短くなってきたら、リスクは避けた方がいいでしょう。カジノホテルは1年中閉まることはありませんが、人生はそういうわけにはいきません。
不動産投資が好まれる理由
負けるたびに掛金を倍にしたらどうなるかという話をしましたが、これを投資と比べてみましょう。投資は、通常三つの種類に分けられ、リスクの高い順にいうと、株、不動産、債権です。株は、投資信託のようなものではなく、自分で一つ一つ会社を選んで買うような場合は、特にリスクが高くなります。ギャンブルのように倍かチャラかとまでは行かなくても、乱高下の激しい投資を数字で表すと以下のようになります。
株を買って、1年目に50%減り、2年目に50%上がったとするとどうでしょう。元に戻ると思う人がいるかもしれませんが、そんなことはありません。100で買って、1年後に50になりますが、2年後は50%上がっても75にしかなりません。100に戻るためには2年目に100%上がらなければならないのです。これは、順番を変えて、1年目に50%上がり、2年目に50%減るとしても、結果は同じです。ミドル・リスク、ミドル・リターンの不動産が好まれるのは、収入の乱高下が無く価格も比較的安定しており、このようなことが起こらないのが理由だと思います。
過去を見るのではなく、前を向く
蛇足ですが、負けた分を取り返そうなどと考えると、どんどん深みに入っていきます。ギャンブル依存症にご注意。これは、何事にも言えることで、自分が苦労したものは、今更諦められないと感じてしまいます。過去を見るのではなく、前を向きましょう。投資では、中間分析というのをしますが、それをする理由は、今から先のことを考えるために今の状況を把握しようというものです。逆に言うと、その投資で今までどれだけ得をしたか損をしたかは、これからどうするかとは関係ないということです。