認知症の母親の家
ある日本人ご夫婦から、家を売って欲しいという依頼がありました。奥さんのお母さんが住んでおられる家ですが、認知症がだんだんひどくなってきたので、一人で住み続けるのは無理だ、ということです。もう何十年も前に買った家で、今は100万ドル以上の価値があるでしょう。具体的に話を進める前に、売ることが本当に彼らにとって最善の選択であるかどうかを確認するために、いろいろと質問をしました。
家を売りたい理由
家の名義は、お母さんだけではなく、娘さん夫婦も、だいぶん前に改築工事をしたときに所有者になり、改築のためのローンを借りたそうです。娘さんはワイキキのお店で働いておられますが、ご主人はもう退職されています。お二人はホノルル市内の分譲マンションにお住まいで、ご主人が退職されてから、収入はずいぶん減りました。二人でお母さんの家に引っ越すと、娘さんの職場が遠くなるので、お母さんが家を売って、市内に引っ越して欲しいというのです。
アメリカには定年退職という制度はありませんので、健康でさえあれば何歳であろうと関係ありません。社会保障制度給付金、日本で言う厚生年金がもらえるようになるのは62歳からで、70歳まで待つと満額もらえるようになるので、60代で退職するのが普通です。この娘さんも、そろそろ退職を考えておられるそうですが、老後の準備がまだ十分でないので、まだ2-3年は頑張らなければとおっしゃっていました。
マイホーム控除の提案
そこで私はある提案をしました。娘さんがお仕事を辞めてご夫婦でお母さんの家に引っ越したとしましょう。今住んでいるマンションは人に貸していくらかの収入が得られるはずです。2年経ってお母さんの家を売ると、マイホームの税控除が3人分もらえます。一人分の25万ドルではなく、3人分の75万ドルになるのです。売却から5年さかのぼって、2年以上住んでいれば、控除ができるのです。
知らないと損をする
2年後にいくらで売れるかはわかりませんが、仮に売却益が75万ドルあったとしましょう。控除が25万ドルではなく75万ドルになることによって、全額非課税になるのです。節税はたぶん10万ドル以上増えて、娘さんの2年分の給料の手取りより大きな額になるでしょう。3人は、非常に喜んでくれました。私は会計士や税理士ではありませんので、必ず専門家に相談するように伝えておきました。世の中、知っておかないと損することがたくさんありますね。