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FIRE:経済的自律・早期退職を日本で目指すなら何をすべきか

FIRE〜Financial Independence Retire Earlyとは

最近、欧米の若者の間でFIREという言葉が流行り、日本でも広まっているそうです。早く経済的に自立してリタイヤするという言葉の頭文字なのですが、経済的に自立するとは、親のすねをかじらないということではなく、リタイヤしても大丈夫なだけの資産や残余所得があるという意味です。米国の2018年の調査によると、45歳以上の高額所得者で、この言葉を知っている人は11%、概念を知っている人は26%だそうです。

実は、概念自体は新しいものではなく、私も、FIREという言葉は知りませんでしたが、概念は知っていました。簡単に言うと、必要な年間生活費25年分を貯めると、ほぼ確実に死ぬまでなくならないということです。総務省の調べによると、2019年の一世帯当たりの平均支出は約300万円で、25年分だと7500万円になるのですが、それがなぜなくならないか、からくりを説明しましょう。

米国のFIREは投資して年7%増える想定

米国の株の収益率は、ダウやS&P500などのインデックスによって違いますし、これらのインデックスが始まった時期もまちまちですが、FIREでは、株と米国債に投資して、年平均7%増えるという想定です。インフレが平均3%だとすると、その差の4%を毎年投資から引き出せば、投資の元金は3%増えます。リタイヤして2年目は、元金が増えていますので、2年目の4%は1年目の4%よりインフレ分増えているはずです。

実際の数を使ってやってみましょう。計算しやすいように、百万ドル貯めてリタイヤするとします。退職1年目は7%増えて、$107万になります。$100万の4%を引き出すと$4万で、これが初年度の生活費です。投資は$103万に増えていますので、2年目にその4%を引き出すと、$41,200になり、インフレに合わせて1年目の$4万より3%増えます。お気づきかと思いますが、$100万は、年間生活費の$4万の25倍です。このようにして、半永久的に生活費を賄い、死ぬときには子供に遺産として残せるというわけです。

日本で早期退職を目指す場合の答えはひとつ

これを日本でやるとしたらどうでしょうか。日本の株や国債を買って、果たして7%の収益があるでしょうか。失われた30年を振り返ると、それは難しそうです。不動産も、人口の減る日本では、一部の地域を除いて、値上がりは望めません。この問題の解決方法は、実は簡単です。外国に投資をすればいいのです。一発当てて大儲けをしてやろうというわけではありませんので、安定した米国の株や不動産がいいでしょう。ただし、高額所得者の方は、節税策も必要ですので、日本の不動産投資をお勧めしますが、それは以下のブログをお読みください。

不動産投資節税シリーズ2:不動産の減価償却による節税の仕組み

日本が有利な点もある

実は、日本人には一つのアドバンテージがあります。日本のインフレ率は米国より低いということです。1%と想定すると、毎年同じ収益を得るために必要な額は、年間生活費300万円の25倍にあたる7500万円ではなくて、5千万円で済みます。

米国には定年退職というものがなく、貯蓄、というより投資してある程度の資産を築けばいつでも退職できるという考え方は、今の若い人たちだけでなく、昔からありました。カリフォルニア出身の家内が学生時代に働いていた会社の上司は、40代でリタイヤしました。今、米国の若い人の間でFIREという言葉が流行っているのは、モノや富にこだわらないで、本当にやりたいことをやろうという考えの人が増えているからではないかと思います。

日本の若者の間にもそういう人が多いのかもしれませんが、FIREという言葉が流行っている背景には、老後への不安という現実問題が潜んでいるような気がします。今の日本は、お年寄りよりも、若者の方が資産形成に興味を持っていると聞きますが、今退職している世代は、今更資産形成をしようと思っても遅すぎます。その世代の不安を目の当たりにしている若い世代にとって、老後の準備は他人ごとではないのかもしれません。

ワンルームマンション投資にご注意

大分下火になってきたようですが、老後の備えのためにワンルームマンション投資に手を出す人が多いと聞いています。ローンの支払いは家賃収入より月1万円くらい多いが、たった月1万の投資で35年後にはマンションが丸ごと自分のものになるという謳い文句だそうです。もちろん買わされた新築マンションは、35年後にはもうそろそろ終活をし始めるころ。業者は嘘をついているわけではないので、詐欺にはなりませんが、損をすると分かっているのにあたかもいい話のように言われると、乗ってしまう人が多いようです。1年のうちに3室も4室も買わせる業者は、悪徳としか言いようがありませんが、それに騙される方も…。

米国株に投資した場合

毎月1万円出して赤字をカバーしなければならないということは、収益率は負です。しかも、物件の価値自体も下がります。35年後、ローンを払い終わった時点での物件価値は、頭金よりは多いでしょうが、大した額ではありません。株なら、少々の配当があるばかりか、S&P500やナズダックなら、株価自体が年平均10%上がります。35年経つと、28倍になるのです。アインシュタインが、複利は宇宙最大のパワーであると言ったそうですが、まさにその通り。35年もかけるのであれば、5000万円達成に必要な積立金は、10%の収益率なら年間18.5万円。7%でも36万円に過ぎないのです。月3万円の積み立てなら、可能ではないでしょうか。

米国の投資の考え方

私は、息子が高校を卒業したときに、こんなことを提案しました。大学は行きたくなければ行かなくていい。もし高校を出てすぐに就職するのであれば、4年間は家にタダで住んでいいし、大学に払うはずの授業料を投資してあげる。と言って、その額がどれほどになるかを計算してあげたのです。もう大分前のことでしたが、2019年の統計を基に計算してみましょう。

高卒の平均給与は年間約$30,000です。州立大学の授業料が年間約$15,000とすると、所得税を払って少々小遣いを使ったとしても、4年間毎年3.5万ドル投資できます。それを7%で運用すると、35年後、57歳になったときには$180万近くに、10%なら$500万にもなるのです。息子はこのオファーを蹴って大学に行きました。大卒の平均給与は約$54,000です。税引き後の差額が$1.5万としても、それを毎年投資すると、7%なら35年後には$207万になります。10%なら407万ですが、給料の差額が年とともに広がるので、大卒の方がやはり有利でしょう。

複利の力を利用することで億万長者に

大学に行くかどうかは別として、若い時から投資をして複利の力を利用することの重要性がこれを見てもわかると思います。米国では、401kなどの個人年金だけでなく、IRAと呼ばれる課税繰り延べの個人退職勘定を設けて、50歳未満は年$6千投資できます。これが始まったのは1980年代初頭ですが、その時の宣伝文句は、「あなたも百万長者になれる」でした。$百万は約1億円ですので、日本なら億万長者です。7%で運用できるとすると、$百万になるのに38年。大卒なら、ちょうど60歳です。50歳を超えると$7千投資できますし、数年ごとに投資できる最高額が上がっていきますので、じっさいは38年もかかりません。日本の若い皆さん、あなたも億万長者になれます。でも、やり方を間違えないように。