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REDFIN(レッドフィン)のビジネスモデルは日本で可能か

 

先日、ソニー不動産が米国最大の不動産サイトのジローや、ソフトバンクが投資をしてIPOで儲けたオープンドアのようなiBuyer(ITを使った薄利多売の転売)を始めたという話をしました。今日は、米国第2の不動産サイトであり、仲介業者としても堅実に業績を伸ばしているレッドフィンのモデルが日本で可能かどうかについて、考えてみたいと思います。

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REDFIN(レッドフィン)のビジネスモデルは日本で可能か

米国不動産業界の変化

まず、米国の不動産業界の変化を全体的にご説明します。NAR(全米不動産協会)は、米国最大の職能団体であり、通常その会員にならないで仲介業をすることはありません。実は、リアルターという言葉自体NARが考案したもので、NAR会員でなければ使うことはできないのです。そのくらい強力な団体なのですが、NARでは、売主が売り買い両方のコミッションを払うという商慣習を作りました。これは法律でもNARの規則でもありませんので、そうしなければならないわけではありませんが、これが米国の不動産業者の利益を守ってきました。

米国の不動産仲介業のコミッション(仲介手数料)の仕組み

まず、売り側のエージェントに払うコミッションは、通常3%ですが、エージェントは、自前でプロの写真やビデオを撮ってもらったり、最近では3Dのバーチャル・ツアーを作成したりします。米国の売り物件の約半分はステージングをしますが、これもエージェントの自前です。仲介業者ではなく、エージェントの自前と言ったのは、米国では通常エージェントは自営業で、仲介業者ののれんを借りているだけだからです。日本でも、最近リマックスがこの制度を取り入れたと聞いています。

これらの費用は、仮にその物件が売れなくても売主に請求できませんし、3%と言ってもその全部が収益になるわけではありません。通常、フランチャイズに属していればコミッションの6%ほどのフランチャイズ費を払い、エージェントは残りの50-80%をもらうことができます。そこからさらに経費を引くわけですので、そう考えると3%はそう高くはありません。過去において、コミッションを割り引く業者もありましたが、薄利多売では十分なサービスを提供することができず、生き残れませんでした。

崩れはじめた商習慣〜コミッションが低下する3つの理由〜

割引仲介業者に頼む場合でも、買い側のコミッションは3%払う必要がありました。そうしないと、買い側のエージェントは客を連れてこないからです。この仕組みがコミッションを守ってきたわけですが、今、崩れかけています。それには多くの理由があります。

1.インターネットの普及で、半数以上の買主が自分で物件を見つけます。見たい物件のコミッションが低くても、エージェントがそれを見せないということはできません。見せない理由を正直に言えば、首になるだけですし、買主を納得させるためには、もう売れたなどと虚偽の理由を考えなければならないでしょう。

2.NARは、米国法務省、消費者、NARのコミッション慣習と異なる新モデルの仲介フランチャイズなどから、独占禁止法違反で訴えられています。法務省の訴訟は既に示談案が裁判所に提出されており、MLS(NARの全支部が運営している物件サイトで、ジローなどのサイトもそこから情報を得ている)にコミッションがいくらか掲載することも、示談の条件の一つです。コミッションが低い物件をエージェントが見せたがらない場合、買主にその理由が分かるからです。消費者からの訴訟はいくつもありますが、消費者側が全面勝利すれば、買主のエージェントに払うコミッションは、買主が払うことになりかねません。

3.iBuyerやレッドフィンなどのIT仲介業者はコミッションを割引いています。iBuyerは転売ですので、仕入れや売却にエージェントは必要ありません。自社の従業員がすればいいのです。しかし、売却時の買い側のエージェントにはコミッションを払わなければなりません。iBuyerは、売却費用を下げないと成り立たないモデルですので、だんだんコミッションを下げるようになり、現在2%くらいになりつつあります。

なぜREDFIN(レッドフィン)は成功しているのか

既存の仲介フランチャイズは、ジローやレッドフィンが仲介を始めることを長年恐れていたのですが、iBuyerを始めたジローと異なり、レッドフィンは、予想通り仲介を始めました。レッドフィンのエージェントが買い側になる場合は、売主がコミッションを払いますので問題ないのですが、レッドフィンが物元になる場合は、コミッションを割り引くのです。今まで割引仲介業者が成功しなかったのに、なぜレッドフィンが成功しているかが、この記事のカギです。

米国では、エージェント業にあこがれる人は多く、エージェントとして成功すると、もらえるコミッションの割合も増え、有名になれば、それほど営業をしなくてもどんどん頼まれるようになります。一度の仲介でもらえるコミッションが大きいので、一獲千金の職業だと思われているようです。知名度の高い人、例えば元ミスハワイとか、地元のニュースのアナウンサーなども、不動産仲介を始める人が多いです。

しかし、ほとんどの人は営業ができなくてやめていきます。エージェントの平均所得は、日本円にして500万円もありません。数少ない物件を勝ち取るために、過大な時間をかけているわけですが、それができるのは、契約できれば大金が入るからです。

しかし、レッドフィンはそんなことをする必要はありません。運営しているサイトが有名ですので、何もしなくてもそこからお客さんがたくさん来るわけです。レッドフィンは、エージェントを従業員として雇って、流れ作業で仕事をし、彼らは営業に時間をかける必要はないのです。だからこそ、薄利多売が成立しており、給料は平均的エージェントの倍以上であると報告されています。

日本でもREDFIN(レッドフィン)のビジネスモデルは可能か

日本でも、何度かこれと似たような試みがありましたが、運営側が格安物件を公開する前に先取りしたり、直営店がフランチャイズ店の商圏に参入したりなど、いろいろな問題があったようです。ビジネスモデル自体とは関係のない問題でうまく行っていません。ITを使って透明でフェアな取引ができるようになっても、運営する側がフェアでなければ、うまくは行きません。そのような問題は別として、日米の商慣習の違いを比較しながら、レッドフィンのようなビジネスモデルが日本でも可能かどうか、考えてみましょう。

まず、コミッションの仕組みですが、日本は買主が買い側のエージェントに払いますから、NARのような仕組みはありませんので、下げることは簡単にできると思います。私は、日本で海外投資家との取引に関わったことが何度かありますが、彼らは、よくコミッションを値切ります。他の業者に聞いても、同じことを聞きます。取引が進んでから値切られるのは困りますが、最初から値切り交渉をするのであればフェアです。米国でも、事業用不動産の取引には前述した仕組みはなく、誰がいくら払うかは全く自由で、小さな物件でない限り、買い側が3%もらえることはそう多くありません。

日本人は、これが相場だと言われると、おとなしく払う人が多いのでしょう。業者も、コミッションが減ったら経営が成り立たないというところが多いでしょう。日本には、ざっくり10万の不動産業者があり、1億人の市場を取り合っているわけですから、1社あたり千人です。しかも、米国人が一生に6-7回家を買い替えるのに比べて、日本人の多くは、一生に一度しか購入しません。そんな小さなパイを苦労して取り合うのは、取れた時の額が大きいからです。

取り合いをしている、つまり営業に時間をかけているという点では、米国のエージェントと同じです。米国のフランチャイズでは、必ずKPI(主要業績評価指標)を教え、一つのアポを取るためにはどれだけ電話をしなければならないか、一つ物件を取るためにはいくつのアポを取らなければならないかということを教えます。日本では、KPIという概念はまだそれほど普及していないかもしれませんが、やっていることは同じでしょう。

日本にも米国のような不動産サイトがありますが、サイトを運営する会社が仲介を始めると、同じように顧客獲得のための直接費と時間が必要なくなり、レッドフィンのようにコミッションを下げても、ビジネスは成り立つでしょう。日本の場合、買主側の仲介をするときでも、コミッションを下げることができますので、買主の獲得はレッドフィンより楽かもしれません。

日本での問題点

しかし、問題点は多くあります。まず、日本の業者の多くが両手仲介を望んでいるという点です。〇〇サイトで宣伝したら、買い側のコミッションが安いので売りやすいが、両手はできないと分かっていれば、宣伝しないかもしれません。しかし、売主本人がそれを望めば、業者も載せざるを得ないでしょうし、嫌だと言えば、売主はそのサイトを運営している仲介業者に頼めばよいわけです。

もう一つの問題は、宣伝している業者が必ずしも物元ではないという点です。これは米国に住んでいる私にとっては非常に不可解な仕組みです。住宅の場合、仲介業者であれば、MLSの物件を自分のサイトに載せることは自由です。ジローやレッドフィンは、最初は米国にある600以上ものMLSと個別に契約をして載せていたわけですが、今は両社とも仲介を始めてNAR会員になりましたので、その必要はありません。しかし、売り側の業者やエージェントが誰であるかも載っていますので、問い合わせてみたら物元ではなかったということはないのです。

米国には住宅のMLSはありますが、事業用不動産にはありません。日本にはレインズがありますが、業者でないと見ることはできません。米国のMLSも、インターネットが発達するまでは電話帳のような巨大なもので、毎週印刷されて業者に送られていました。ですから、買主が見ようと思っても、業者のオフィスに行って見ることくらいしかできなかったわけです。

ネットが発達してからは、業者用のサイトと一般向けのサイトに分けられ、例えば前述した買い側に払うコミッションなどは、業者のサイトでないと見ることができないのですが、これに関しては法務省とNARの示談の結果、一般向けサイトでも見ることができるようになる予定です。日本でも、レインズの情報を誰でも見ることができる、あるいは自分のサイトに転載できるようになれば、少なくとも事業用不動産に関しては、レッドフィンのようなモデルの模倣が簡単にできるようになるのではないでしょうか。

日本で実現可能なビジネスモデル

そうなる可能性はあまりなさそうですので、その代わりにできることはないかと考えて見たのですが、サイトが仲介を始めれば、それで十分に儲けることができますので、無料で物件を宣伝することは可能だと思います。米国のMLSは無料ですし、ジローやレッドフィンは、最近まで逆にそのために経費をかけていたのです。宣伝は無料だし、コミッションは安いということになれば、掲載数は増えるのではないでしょうか。このように考えると、レインズが公開されないことは、業者にとっては得ですが、売主にとっては何のメリットもないのではないかと、改めて思わされます。

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今日は、米国第2の不動産サイトであり、仲介業者としても堅実に業績を伸ばしているレッドフィンのようなモデルが日本で実行できるかどうかについて、考えてみました。

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