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揺らぐ米国不動産取引の商習慣ー米司法省、NARとの示談を取り下げ

 

去年11月、司法省は、独占禁止法違反でNAR(全米不動産協会)を訴え、同時に示談を提案しました。これに関して私が最後に書いたブログは3月30日でしたが、今日は、複数のインマンの記事から、その後の進展を解説します。司法省が示談を取り下げたこととその理由、バイデン大統領のアメリカ経済競争促進案とそれに関する発言を取り上げ、現実味を帯びてきた不動産業界の変革を予想します。

司法省が訴訟を取り下げた意図

前回のブログでは、示談は、当事者間で合意しても、裁判所が認めなければならないので、この訴訟はまだ終わったわけではないと書きましたが、何と、示談を提案した司法省が、7月1日にそれを引っ込めてしまったのです。それだけではなく、毀損なしに訴訟自体を取り下げました。毀損なしに取り下げたということは、またいつでも訴えることができるということです。

カスタマー・ファースト:全米不動産協会(NAR)が独占禁止法で訴えられる 米国司法省によるNAR(全米不動産協会)独占禁止法違反訴訟の行方:エージェントの違反行為を証明する録音をREXが公表

ですから、NARはもう何も心配してなくていいのかと言うと、そんなことはありません。取り下げのきっかけは、司法省が提案した示談では、司法省が示談後もNARを独占禁止法で訴える権利があることが明確ではないとして、その文言の修正を提案したところ、NARがそれに応じなかったことが原因です。司法省は、「本省の今回の行動は、制約なしにNARの規則や行為を、幅広く捜査することができるようにするためのものである」と述べています。言い換えると、今回の示談はまだ甘いということなのでしょうか。

これに対し、NARのスポークスパーソン、トロイ・グリーン氏は、「独占禁止局が承認し、十分に交渉した上で合意し、既に我々が導入を始めていた示談を司法省が取り下げるとは、今までに類を見ない契約違反だ」と述べています。そう言いたくなる気持ちは分からなくはないですが、正確には示談はまだ成立していなかったので、この言い分は通らないでしょう。

 示談に含まれていた事項とは

示談に何が含まれていたかと言うと、

  • コミッションのパーセンテージや額をMLS(マルチプル・リスティング・サービス)に載せることを禁じる、妨げる、しないように勧める規則の廃止。
  • コミッションの額をクライアントに知らせることを義務化する規則の採択。
  • 買主の仲介業者を含め、クライアントに提供するサービスが無料であると言っても構わないという規則の廃止。(米国では売主が買主側のコミッションも払うので、買主は買主のエージェントにコミッションを払わなくていいのですが、売主が支払っているので無料ではなく、その分物件の額に上積みされているので、買主も間接的に支払っているということです。)
  • コミッションの額が低い物件や、特定の仲介業者を検索して除外する行為の禁止。例えば、レックスという仲介フランチャイズは、売主が買い側のコミッションを支払わないので、レックスが物元の物件を検索から外すエージェントがいるわけですが、それを禁止するものです。
  • MLSに載せる物件のロックボックスは、全ての不動産エージェントが使えるという規則の採択。これも、特定の仲介業者が、物件の内見をできないようにすることを防ぐものです。

アメリカ消費者連合(CFA)は、この程度の示談では、価格競争を促すことはないが、ディスカウント・ブローカーの差別や、クライアントにコミッションの高い物件を買わせるようなことはなくなるだろうと、述べています。

不動産取引に関する多くの集団訴訟

司法省が何を考えて示談を取り下げたのかは、定かではありませんし、「幅広く捜査する」と言うことが具体的に何を意味しているのかはよく分かりません。しかし、前述したレックスや、消費者による幾つもの集団訴訟を、司法省が真剣に受け止めている可能性はありそうです。

NARだけでなく、リアロジー、ケラー・ウィリアムズ、リマックスなどの大手フランチャイズが、特に売主に買い側のコミッションを払わせていることに関して、多くの訴訟で訴えられています。それによって、買主のエージェントは、コミッションの高い物件を買わせようとし、買主は、エージェントと、コミッションを下げる交渉ができなくなっているからです。原告が勝訴すれば、米国の不動産業界は、一変することになります。

CFAも原告を支持しています。上級研究員のステファン・ブロベック氏は、「司法省の決断は、消費者にとっては良いことです。…提案されていた示談では、消費者がコミッションの額を交渉することはできません。そのためには、売主と買主が別々にコミッションを払うべきで、それがこれらの訴訟の争点なのです。」

バイデン大統領の意向が反映されている?

司法省を支持しているもう一人の大物がいます。バイデン大統領です。彼は、7月9日に、アメリカ経済競争促進案を発表し、「はっきり言っておくが、競争のない資本主義は、資本主義ではなく、搾取だ」と述べました。彼は、NARの話をして訳ではないのですが、今回司法省が取った行動は、バイデン大統領の意向を反映しているものだという見方が強いようです。

揺らぐ米国不動産業界の商習慣

不動産コンサルタントのリサック氏は、「リベートを禁止している州もあるが、それなら(買い側に払うコミッションも)不正商習慣になる」と述べています。私もNARの会員でありながら、これらの商習慣に疑問を持つ一人ですが、4か月前に本件に関するブログを書いたときは、そう簡単に商習慣を変える変革は起きないだろうと、漠然と思っていました。しかし、今回の司法省の行動とそれに関する説明を見ると、ひょっとしたらひょっとするのではないかと思い始めました。コミッションが下がれば、NARの140万人の会員は、激減するでしょう。

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今日は、去年11月司法省がNARを独占禁止法違反で訴えたことに関するその後の進展を解説しました。このチャンネルではハワイでのオープンハウスの様子や、アメリカ・ハワイの不動産マーケットの情報をお届けしています。アメリカの不動産に興味のある方、ハワイで不動産を持ちたい方は是非チャンネル登録をお願いします。

米司法省、NARとの示談を取り下げ:インマン
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