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ハワイのコンド所有者には不利な条件が山積み

 もう10年以上前のことでしょうか。国土交通省などから、数名の方が、米国のコンドの終活あるいは再生について見学に来られたことがありました。いろいろな方々と面会し、私が通訳をしたのですが、その一つがCAI(地域自治会協会)Community Association Instituteでした(CAI Hawaii Chapter – -Home-)。

Community Association Institute

 私が日本支部の会員であるIREM(全米不動産管理協会)Institute of Real Estate Managementと似ている部分もありますが、IREMが管理全般に関する団体であるのに比べ、CAIはコンドなどの自治会管理だけです。コンド自体、歴史がまだ浅いので、CAIもIREMほどの歴史はありません。

Department of Commerce and Consumer Affairs

 そのCAIが、DCCA(Department of Commerce and Consumer Affairs)ハワイ商務消費者庁の不動産委員会から、コンド所有者教育のため、$19,500で教材作成を引き受けました。名付けてコンドラマ。韓ドラをもじったような名前ですが、たぶん、ほとんどの方は、そう聞いても、だからどうしたと思っておられるでしょう。

 問題はこうです。組合管理がよくできていれば問題ないのですが、うまく行っていないコンドも多くあります。何事も自分の思い通りにしたいと言う一部の人たちが理事になり、居座っていることもよくあるのです。年次総会では、理事選出の投票を理事会あるいは特定の理事に委任するオーナーが多いので、理事を辞めさせることは大変です。

 対峙している場合、管理会社はどちらの味方をするでしょうか。もちろん理事会です。組合の総会で、管理会社がオーナーの味方をして理事会を非難するなどと言うことは考えられません。CAIは、この管理会社の協会なのです。

利益相反(Conflict of Interest)

 CAIは、理事会を助ける管理会社の協会であって、一人一人のオーナーを助ける協会ではないのです。そのCAIが州からお金をもらってこのような教材を作ると言うのは、利益相反です。私が会員であるIREMがテナントを助ける教材を作るようなものです。

 守るのは理事会や管理会社だけではありません。組合管理専門の弁護士たちも、組合の代理です。実際、CAIハワイ支部の理事を見ると、管理会社の社長や、組合管理専門の弁護士が名を連ねています。不動産の免許なしに運営していたことが最近発覚した某有名管理会社の社長もその一人です。

不動産委員会(Real Estate Commission)

 大体、何々委員会なるものは、その業界の人間が委員になることが多く、消費者の立場ではなく、消費者と対峙する立場にある業界人が多いのです。不動産委員会も同じで、法律では、理事が9人、その中の4人以上が仲介業者で、その一人が委員長として選ばれることになっています。9人中、少なくとも二人が一般人でなければいけないのですが、実際は仲介業者が7人、後の2人も関連業界の専門家です。これでは、業界寄りになって当然です。

委任状(Proxy)

 実際、CAIは、今年、組合理事選挙の委任状の扱い方を変えて改選をより簡単にする法案に反対しました。去年は、弁護士がコンドオーナーに手紙を出す場合の弁護士料は、そのオーナーに請求するのではなく、組合が払うと言う法案に反対しました。結果、どちらも可決されなかったのです。

 後者に関しては、去年書いた、「コンド組合の弁護士が弁護士料を取り立てようとしてどうなったか(https://urbanhawaii.site/2022/11/02/attorney/)」をご覧ください。ポーター・マックガイア・キアコナ法律事務所が、飼い犬に関する違反でオーナーに$150の罰金を請求しました。ところが、弁護士料が雪だるま式に増えて行って、最終的には$29,000になったのです。裁判になり、この弁護士事務所は、$47.5万の賠償金を命じられました。

 このような例はいくらでもありますが、最近の例をいくつかご紹介しましょう。まずは今年4月末に始まった裁判から。

 マーク・ブラウンさんは、元陸軍大佐で、カカアコの高級コンドの先駆けとなったホクアの組合理事でした。他の理事たちの利益相反を指摘し、その報復として理事から外されたのです。ハワイには、2017年に、そのような報復を禁じる法律がちょうどできたばかりだったので、彼は理事会を訴えました。

 ホクアの理事会は、ホクアの開発業者と関係のある人が6人もいました。これは、特に高級コンドでよくあることです。安いコンドなら、開発に関わったお金持ちもそこに住みたいとは思わないでしょう。彼らは、利益相反を開示しないで決議をし、私腹を肥やしていたのです。

 直接的なきっかけになったのは、6人の中の一人、ギルド氏の叔母のインテリア・デザインの会社に$8,500の仕事を発注したことでした。ギルド氏は、見積書をブラウンさんに見せないように指図しましたが、実は$22,500支払われていたと言うことが発覚したのです。この裁判の結果は、まだ報道されていません。言うまでもなく、私ならお金があってもホクアは買いません。

 安いコンドなら問題ないと思ってはいけません。ドーセット・ポイントは、$50~100万のコンドで、パンチボールのふもとにあり、高級物件ではありませんが、まずまずのコンドです。

 オーナーのロンダさんは、修繕工事の後、ちゃんと後始末ができてなかったので、管理人に苦情を言いました。何もしてくれないので、業者に直接文句を言いました。それでも効果がないので、消防署の検査官に相談しましたが、これも効果なし。

停止通告書(Cease and Desist Letter)

 そこに、組合弁護士から手紙が来ました。停止通告書です。コンドの一所有者が勝手に業者に連絡してはいけないと言うコンドのルールに違反したとし、違反行為の即時停止と、将来も違反行為を再開してはいけないと言うものです。

 それだけならまだよかったのですが、その通知を出すためにかかった弁護士料として、$4,902.32の請求書が同封されていました。どこの弁護士事務所だと思いますか。そうです。ポーター・マックガイア・キアコナ弁護士事務所です。しかも、ポーター・マックガイア・キアコナは、同様の手紙を全部で9人のオーナーに送っていたのです。

 その一人が理事のナイトさんです。ナイトさんに送られた手紙と、もう一人のオーナーに送られた手紙には、停止通告書に従わなければ訴えるかもという脅しもあったそうです。

 ナイトさんによると、理事会は、ナイトさんにそのような通知を送ることを承認してはいないそうです。理事会が承認したか、理事会会長のラミレズ氏が個人的にポーター・マックガイア・キアコナに指示したのかについて、ラミレズ氏は答えられないと述べています。

 ところで、去年可決されなかった例の法案ですが、公聴会でポーター・マックガイア・キアコナも意見を述べています。弁護士事務所が何の警告もなく停止通告書を送ったりすることはまれで、こんな法律は必要ないと言う内容でした。実際、通常は何回か警告があり、それでも辞めなかった場合に弁護士に頼みますが、ポーター・マックガイア・キアコナは、そうではありません。彼らにとって、停止通告書はドル箱のようです。

ハワイ州不正行為監督官事務所(Hawaii Office of Disciplinary Counsel)

 ロンダさんは、弁護士を雇うお金がないので、ハワイ州不正行為監督官事務所に訴えました。これは、弁護士規制機関です。停止通告書の内容はお決まりで、コピペですぐに書けます。ハワイ大学法学部のケン・ローソン教授は、そんなものに$5,000も請求するのは、報酬に関する州の職業倫理規定に違反するのではないかと述べています。

 私はもちろんこの物件もお勧めできません。コンドを購入する際には、必ず訴訟が起きてないか、確認してください。また、管理がよくできているかどうか、それは保守だけでなく、理事会運営がうまく行っているかどうかも、お調べになるといいでしょう。

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ハワイのコンド所有者には不利な条件が山積み
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