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子供たちが相続争い:揉めるよりマンション売りたい

 あるマンションのオーナー御夫婦から、相談がありました。

 「私のマンション、いくらで売れますか。」

 「せっかく相続対策で建てたマンションをなぜ売るのですか。」

 このマンションは、複合ビルで、1階は飲食店でした。焼肉屋が賃貸していたのですが、閉店し、代わりのテナントの見つけることができず、儲からなくても家賃が出ればそれでいいと思って、ご夫婦で焼肉屋を始めたのです。

 しかし、陽気で元気な奥さんも歳には勝てません。アルバイトを増やして、休みを取り、なんとかやりくりをしていたところ、家が近い息子の嫁が手伝いに来てくれるようになりました。そうすると今度は娘の婿がやって来て、焼肉屋の運営を引き受けましょうかと話をしてきました。

 奥さんは、これはまずいと思ったそうです。息子と娘は仲が良いのですが、息子の嫁と娘の夫は仲が悪く、以前から悩みの種だったのです。これは遺産の取り合いになると思い始めました。建設当初は、相続後売却して資産を2分割するつもりだったのですが、絶対に揉める。二人ともマンションは私が引き継ぐと言い出すに違いないと思ったそうです。

 娘婿はしきりに相続の話をするようになりました。「いつまで焼肉屋を続けるのですか。」「このマンションの近くで家を建てようかと思っている。出来れば実家の土地に家を建てさせてくれませんか。」挙句の果てには、早めに勤め先を辞めて、焼肉屋を継いでも良いと言い出す始末。

 弊社の河野社長は、長男夫婦とは相続のことについて話したことがあり、長男は無理を言う人ではなく、至って穏やかな人でした。相続後売却して2分割にすると言う案に同意をしていたようです。

 しかし、娘婿が金銭にすごく関心があるのは明らかでした。奥さんは、そんなことで絶えずその渦の中に巻き込まれるのも煩わしいし、何より家族仲良く生活をしたいと願っていたのです。

 と言うわけで、マンションが綺麗なうちに高く売って、この問題に終止符を打とうと決めたらしいのです。河野は、3つの代替案の10年のシミュレーションを提示しました。

現状維持

売却し金融資産で保有

売却し市内に同サイズの駐車場2か所を購入して、一つずつ相続させる

 マンションを所有し続けると言う現状維持をゼロ(ベースライン)として比較すると、他の二つの代替案は、以下のような数字になりました。

金融資産保有の場合 -7000万円

駐車場購入した場合 -1500万円(ローンあり)、-4000万円(ローンなし)

 「家族が揉めるくらいなら、4000万円の代価はそんなに高くない。」

 奥さんは、ローンの借り入れが不安でした。そこで、相続争いとローンのリスクを避けるためには、4,000万の損をしても構わないと言う判断をしたのです。

 この例話のポイントは三つ。一つは、いつものことですが、シミュレーションの大切さです。シミュレーションをするためには、まず現状維持を調べて、それと代替案を比べることになります。この奥さんは、売った後のことはあまり考えておられなかったと思いますが、多分、何らかの金融資産に投資することになるでしょう。

 金融資産に投資した場合、マンションの継続所有より7,000万円も損をすると言う結果が出たわけですが、どのようにこんなシミュレーションをするのでしょうか。マンションの継続所有は、今までの履歴がありますので、向こう10年の予想をする場合、根拠のある数字を使うことができます。もちろん、10年先に何が起こるかは分かりませんし、正確な予想は無理ですが、今のトレンドが続けばどうなるかは、大体見当がつきます。

 マンションを売ってできたお金で購入する金融資産のシミュレーションはどうでしょうか。金融資産はいろいろな種類がありますので、どのくらいの利回りが期待できるかを決めるのは困難です。そのような場合、現在、ご本人がどのような金融資産に投資しており、それらの資産にどれだけの収益があるかを見て、期待利回りを決めます。

 現在、金融資産がほとんどないと言う方、また、今までとは異なる金融資産に投資をしたいと言う方は、その方のリスク許容度を調べます。株はリスクが不動産よりも高いので、不安だと言うことであれば、もっとリスクが低く、その代わり利回りの低い投資をすることになるでしょう。もっとリスクを取ってもいいと言う方は、利回りの良い投資をすることになりますが、リスクが高いと言うことは、予想通りになる可能性が低いと言うことです。

 二つ目は、河野が、奥さんが思いつかなかった代替案、つまり駐車場購入を提案したことです。二つ同規模のものを買えば、相続で揉めることもないし、管理の手間も大したことはありません。コンサルをするには、クライアントが持ってきたアイデアだけを評価したのでは足りません。ほとんどの場合、素人であるクライアントは、何が最善か知らないのです。プロは、素人が気づかないアイデアを出してあげる能力がなければなりません。

 三つ目に、最も大切なことは、この奥さんが、4,000万円損してでも、マンションを売ると言う決断をしたことです。投資代替案を選択するとき、必ずしも金銭的に最善のものを選ぶわけではありません。子供たちの相続争いに巻き込まれることと、4,000万円損することとを比べて、そのくらいなら良いと決断なさったのです。

 もし、相続争いを避けることの代価が7,000万円だったらどうだったでしょうか。そんなに損をするのなら、我慢しようと思ったかもしれません。あるいは子供たちに、争うのならお前たちは3,500万ずつ損をすることになるが、それでもいいか、と持ち掛けることもできたかもしれません。二人の合意を得て、公平な相続プランを立てることができたかもしれないのです。

 結論として何を選ぶかはご本人です。私たちの仕事は、決断のために必要な知識を提供することです。

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子供たちが相続争い:揉めるよりマンション売りたい
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