米国の減価償却と日本の減価償却
私のブログの中で、一番よく読まれているのがこの裏技のブログです。
ハワイの木造物件を4年で償却するための、他ではできない裏技米国では、実際の築年数に関わらず、購入時の固定資産税の土地と建物の価値の割合に従って建物の価値を決め、居住系の場合、買った年から27.5年で減価償却します。しかし、日本人が買った場合、日本では日本の法律に従って納税しますので、築22年以上の木造物件の場合、4年で全部償却できるわけです。日本では、多くの場合、償却できる建物の価値は少額です。
しかし、米国ではそんなことはありません。私が年末に売った私自身の物件を例に挙げたいと思いますが、この物件は、1945年築の木造です。2002年に50万ドルで購入し、2018年に$1,294,680で売れました。取得費用も入れると、約130万ドルです。
この物件の場合、固定資産税の土地の査定額が$820,000、建物が$258,900でした。合わせて$1,078,900です。ということは、建物の配分は258,900÷1,078,900=24%です。この物件は、実際には130万ドルで購入したわけですので、その24%は1,300,000×0.24=$312,000となります。この額を4年間で償却できますので、$312,000÷4=$78,000を毎年収入から控除できるという計算になります。日本と違い、22年どころか、築73年の木造でもちゃんとメンテさえしていれば価値が上がるという良い例かと思います。
ところが、償却目的で木造物件を購入なさる方の多くは、ハワイではなく、テキサスのような土地の安い市場を選びます。購入価格に占める建物の価値がずっと高いからです。しかし、ハワイの場合、数は少ないですが、借地に建てられている木造物件がありますので、それを購入すれば、購入価格プラス取得費用を100%4年で減価償却できるはずなのです。
日本の場合、借地に建てられている建物を購入する場合でも、購入価格の一部は借地権の価値とみなされるそうです。つまり土地の価値の一部とみなされるので、購入価格全額を償却することはできません。ですから、ハワイでもできないのではないか?と言うご意見がありましたので、わかる範囲でお答えしようと思います。私は税理士でも国税庁の役人でもありませんので、これに関する意思決定は、専門家の意見をお聞きになったうえでしてください。
ハワイで借地に建てられている物件を買ったら?
そもそも、米国には普通借家と言う概念はありません。すべてが定期借家です。日本では、土地を半永久的に借りる権利を与えれば、地主はいつ返してもらえるか分からないので、地主にとって土地の価値が減ったと考えるのは当然かもしれません。しかし、米国では逆で、貸して収入のある土地の方が、ない土地よりも価値があると考えます。これは、収益還元法(収入に基づいて資産価値を計算する)と言う概念の基本です。
というわけで、実際、ハワイで借地に建てられている物件を買った場合の減価償却がどうるのか、調べてみることにしました。アーバンRECハワイの親会社であるアーバンREC社長の河野は、日本の資産税に大変詳しい人物で、しかも国税庁のお役人を問い詰めるのが非常に得意な人です。解らないことがあるとすぐ国税局に聞きに行ってくれますので、これをするのは彼以外にいません。
さっそく河野に調べてもらうことにしました。以下がその問答をまとめたもので、内輪ネタで恐縮ですが、河野のことをよくご存じの方は、彼が国税庁のお役人を困らせている様子が目に浮かぶと思います。
国税庁の対応
まず国税庁に言われたことは、税務署に聞けということでした。そんなわけないと思いつつも、税務署に電話したところ、案の定、国税庁に聞けと言われました。そこでまた国税に電話して、こう言われたと伝え、そもそもこの質問に答えるのは国税の仕事ではないかと早速問い詰めたところ、電話に出た方も逃げ道を失ったようです。その人ではわかりませんのでしたので、上司に聞いてもらうことになりました。
まず、日本では、借地に建てた建物を購入する場合の借地権の価値の計算の仕方があるそうですが、米国にもそういうものがあるかと聞かれました。国税庁は、その土地代よりも、その土地が更地であった場合の価値の方が高いだろうというのです。その差が、借家権の価値だというわけですが、普通借家でない米国の場合、貸してない土地よりも、貸している土地のほうが価値が低い、ということは無いと主張しました。
ハワイの借地権
いくら河野の地声が大きくても、主張しただけではだめですので、実際どうなっているか調べました。ここで簡単に説明を加えさせていただきますが、オアフ島の場合、元々借地の上に建てた物件は、借地権が切れたら地主に戻ることになっていました。借地権は長いので、最初はあまり問題にしていなかったのですが、1980年代ころから、これでは購入した一般市民がかわいそうだということになりました。ハワイには、巨大な地主がいくつかあり、世論はそれらの地主の権利よりも、弱い立場にある一般消費者の方に傾いていったのです。
そこで、借地に建てた分譲マンションやタウンハウスの一定の割合以上の所有者が、土地を購入したい場合、市が土地を接収するという方法を使って購入できるようにする法律が、1991年にできたのです。この法律は、2005年に撤回されましたが、現在オアフ島で売られているリースホールド(土地なし)物件の約2割は、購入時に土地も一緒に購入できます。そのような物件を調べれば、建物と土地の価値の関係がよくわかるかもしれません。
パースシティーの木造タウンハウスの例
借地に建てた物件はほとんどRCの分譲マンションで、築22年以上の木造のタウンハウスはほとんどありません。その中の一つ、パールシティーのカレッジ・ガーデンズを見てみましょう。このタウンハウスは、1991年の法律によって土地が売りに出されたのだと思われますが、他のこのような物件同様、土地付きのユニットと借地のユニットが混在しています。2016年に売れた二つの物件を見てみましょう。どちらも、買主は、購入と同時に土地を買いました。
2017年の数値を使わない理由は、売買が2016年の末で、その時は2017年の固定資産税の査定が終わっていたので、土地を購入したことによる変化は2018年にならないと分からなかったからです。見ての通り、土地の査定額は上がっていますが、一般市場の変化に沿った上がり方です。ところが、建物の査定額は、急激に上がっています。この物件の場合、土地のリースが切れるのが2039年ですので、あと20年ほどしか使えない建物の価値は低く、土地を買うことによって建物の価値が上がったと評価されたのでしょう。ほかにも土地を購入できるタウンハウスがありますが、同じような結果でした。
もしそうなら、その差額は土地の価値に反映されるべきでないかと思うかもしれませんが、御覧の通り、購入前の土地の査定額が購入後より高いということはありません。土地と建物の所有者が異なるという不都合な状態から、同一であるという好都合な状態になることによって、物件の価値が上がったという考え方でしょう。査定額と市場価値とは異なるという話を始めると、随分ややこしくなりそうですが、土地と建物の割合は固定資産税の配分に沿ってするというのが普通です。
話を元に戻しますが、河野は、このような物件の今までの申告事例がどうなっているか見てみるように国税の窓口に要求しました。ところが、担当者はおろか、その上司まで、そのような事例は知らないというのです。ですから、何とも言えないというのですが、最後に、重要なことを言ってくれました。それは、米国での建物の価値の計算の仕方に従うということです。ということなら全部償却可能なはずです。
第一号に・・・
木造築22年以上の物件の建物の価値を4年で償却できるという法律を使って、米国の木造物件を購入するというアイデアを私が初めて聞いたのは、もう20年近く前です。実は、その頃私は、2LDKで16戸入りの古い木造アパートを売りに出していたので、これを利用して日本人の買い手に売ろうとしたのですが、買主の税理士が反対して、契約が成立しませんでした。あの方は、その後、買っておくべきだったと後悔されたのではないかと思います。
土地なしの物件を購入して4年で100%償却するというアイデアは、仮に認められなかったとしても、取得原価のごく一部が土地代とみなされるだけで、リスクは大きくはないと思います。みなさん、国税庁のお役人も知らないというのですから、こんなことをした人は日本にまだ一人もいないということかもしれません。その第一号になろうという方はいらっしゃいませんか。