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ハワイ不動産のローンを東京スター銀行が出してくれる:実効金利は?

 

東京スター銀行のハワイ不動産ローンの内容

ご存知の方も多いと思いますが、以前、日本の某銀行が、テキサス州、ネバダ州、カリフォルニア州、ハワイ州の不動産を担保とした、国内担保なしのローンを出していました。

参考 東京スター銀行と日本保証によるハワイ不動産担保ローン取り扱い開始について日本保証

ところが、スルガ銀行の不正融資の件で不動産融資が厳しくなり、残念ながらこの融資はなくなってしまいました。このローンの保証会社は日本保証だったのですが、代わりにローンを出してくれる銀行をずっと探していたようです。先週、東京スター銀行がそのローンを出すというプレスリリースを出しましたので、その内容をご紹介しましょう。

とは言うものの、それほど大した内容は書いてありません。某銀行に比べて、今回のローンはかなりスケールダウンしているようです。ハワイ州だけで、それもオアフ島の南岸のみに限られています。そのほか、最初の5年間は利子払いのみにするオプションも、今回はないようです。LTV(ローンの額÷物件の売買価格)のことも書いてありません。(某銀行は、50%か、固定資産税の査定額の60%で、どちらか低い方ということでした)

早速メールしていろいろ質問しましたが、確実な返事はあまりありませんでした。柔軟性があるということなのか、あるいは当の銀行もどうするかまだはっきり決めてないことが多いのかもしれません。欲しい物件が決まったら、早めに銀行に連絡するようにとのことでした。オファーをする前に、先に銀行に相談しろということだと思います。

2.8%の金利は米国ではお得

2.8%と言う金利は、日本では高いでしょうが、米国では、自分が住む場合なら1%近く、投資不動産なら2近く相場よりも低いです。期間は1-5年ですが、割賦償却期間は30年ですので、30年ローンを借りた場合の支払いと同じ額になり、期日までに残高を完済するか、期間を延長することになります。延長しない場合は、期日までに借り換えるか、売ることになると思いますが、原則として延長できるそうです。実は、米国の事業用不動産ローンの場合、割賦償却期間は長くても、期間は5年ということが多く、バルーン・ローンと呼ばれます。ただ、バルーンの場合、通常、延長はありませんので、東京スター銀行の方が有利だと言えます。

不動産投資指標はどうなる?

この条件だと、ローン定数(年間負債支払額÷ローンの額)は4.93%になり、キャップレートがそれ以上の物件を買えば、単年で見てもレバレッジが正になり、キャッシュ・オン・キャッシュ収益率(税引き前のキャッシュフロー÷自己資本)はキャップレートより高くなります。この説明がぴんと来ない方は、「割引キャッシュフロー攻略」シリーズの23をお読みください。

割引キャッシュフロー攻略②キャッシュ・オン・キャッシュ配当率 割引キャッシュフロー攻略③レバレッジ

ポイント(ローン手数料)による実効金利の上昇

ローンの手数料がローンの額の1%です。何でそんなもの取るんだと思う方もいらっしゃるでしょうが、これも米国では普通です。1970年代の後半から、米国の不動産融資は金利が非常に高くなり、198110月には、何と18.5%になりました。こんなに高いと、借りてくれる人がいないというわけで、カリフォルニアのある銀行が、ポイントと言うものを考案しました。ローンを出すときにポイント(1ポイントはローンの額の1%)を取ることによって、金利を他行より下げたのです。

これが商習慣になってしまったらしいのですが、何ポイント取るかは、銀行次第です。一つの銀行が、ポイントの異なるローンをいくつも出すことも良くあり、中には負のポイント、つまりポイント分払うのではなく、もらえるというローンもあります。それを使って、鑑定など、ローンのそのほかの手数料を支払うわけです。通常、ポイントが高いほど金利が安く、低いほど高く設定してあります。要するに、ポイントとは、前払いの金利なのです。

毎月支払う金利と違い、これは最初に一括で払いますので、借入期間が短いほど実効金利は高くなります。極端な話をするとよくわかると思いますが、借りたその日に完済すれば、利子はつかないはずですが、ポイントは支払わなければならないので、ローンの期間がゼロで、実効金利は無限ということになります。5年で完済した場合の実効金利は3.03%です。これより早く完済した場合は、早ければ早いほど実効金利は上がります。

金融電卓で計算してみよう

この計算をもう少し詳しく見てみましょう。金融電卓を持っている方は、実際にやってみてください。1億円借りたとします。割賦償却期間は30年ですので、支払回数は360回です。金利は2.8%です。これらの数字を金融電卓に入れて支払額を出すと、月410,894と出ます。それでは5年後の最終残高を計算してみましょう5年は60か月ですので、36060に変えてください。そして最終残高を出すと88,578,795と出ます。しかし、1%の手数料を払っているわけですので、実際のローンの額は1ではなく、9900万円です。1億を9900万に変えたうえで、金利を出すと、3.03%と出るはずです。支払額や最終残高を計算してからローンの額を9900万円に変える理由は、これらの額は1億円借りるという条件で計算されているからです。

「繰り上げ返済時に、返済金額に対して、原則、2の手数料がかかる」とありますので、これも計算に入れると、さらに上がります。例えば、411カ月で物件を売り、残高を完済したとしましょう。その場合、実効金利は3.38になります。これは問い合わせても返事がなかったのですが、多分、一度延長すればこの手数料はなくなると思いますので、1ローンにしておいた方がいいかもしれません。

実効金利が高くなる条件は他にも

ではこの計算もしてみましょう。途中まで先ほどと同じですが、60の代わりに59を使ってください。そうすると、残高は88,782,531円になります。一か月分支払回数が少ないので、先ほどの残高より少し高くなります。この残高の2を手数料として取られるわけですので、これに1.02をかけてください。そうすると、90,558,181円になります。残高は88,782,530円なのですが、実際に支払う額は90,558,181円なのです。

ローンの額も前回と同じように9900万円にして、金利を出すと、3.38%と出てきました。これが実際の金利です。繰り上げ返済の手数料は、米国では前払い罰金と呼ばれ、珍しくはありませんが、期日より1カ月でも早く返したら払わなければならないというのは、珍しいと思います。1年で完済してしまった場合は、繰り上げ返済の手数料がなくても3.83%、あれば、5.77にもなりますので、ご注意ください。めちゃくちゃ金利の高いローンだと思うかもしれませんが、米国で借りてもポイントや前払い罰金は払いますので、金利が低い分だけ得だと考えて下ればいいと思います。