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ハワイの家の7戸に1戸は空き家:ホノルル市は空室税を検討中

 2020年国勢調査によると、ハワイの住宅は7戸に1戸が空室です。今日は、住宅難のハワイに空き家が多い理由について解説します。また、ホノルルで検討されている空室税と、それを既に実施しているカナダのブリティッシュ・コロンビアの例を紹介します。

全国空室率ランキング

 売り物件の在庫が過去最低のハワイ州で、戸建てとコンドの13.8%が空室とはどういうこと?他の州と比べてみると、ハワイは全米で18位。最も高いのがバーモントとメイン州で22.6%、3位はアラスカで20.5%です。以下は、上位10州ですが、見ての通り、ほとんどが田舎の人口の少ない州です。

空室率が高い州

 逆に低いのは、東海岸の人口の多い地域、西海岸、イリノイ州などです。最も低いのはオレゴン州で7.8%、次いでワシントン州が7.9%、3位のコネチカット州が8.1%でした。

空室率の低い州

空室とは何か?

 まず、空室に何が含まれるかを説明します。一つは、オーナーが貸すつもりでいるが、まだ貸せてないものです。通常、不動産投資や管理業界で空室率というと、これを意味することが多いです。100室のアパートで10室空いていれば、空室率は10%です。それ以外に、売出中で誰も住んでいない家屋や、人口が減って空き家になったものも含まれます。

 しかし、この統計には、それ以外にも多くのものが含まれています。その一つは別荘です。ハワイには別荘が多く、その多くは所有者が日本人で、オアフ島は特にそうです。例えば、私のクライアントの一つは高級コンドの所有者組合ですが、3分に2以上が別荘として使われており、所有者のほとんどは日本人です。駐車場はいつもがら空き。

 メインランドに住んでいるアメリカ人がハワイで物件を購入する場合は投資目的が多く、将来ハワイでリタイヤしたいという人も多いです。そのような人も、それまでは賃貸します。

 もう一つはタイムシェアです。タイムシェアは、稼働していても、国勢調査では空室とみなされるそうです。ホテルはどうかと言うことになりますが、ホテルは住居とはみなされないでしょう。タイムシェアが住居とみなされるのは、恒久的に住むことができる住居の設備が整っているからだと思われます。物理的に区分されているだけでなく、時間的にも区分所有の住居だという判断なのでしょう。

 実際、戸建てやコンドを数人でお金を出し合って購入し、時期を区切って利用することはよくあり、そのような購入を専門に扱っている仲介業者もあります。つまり、複数の所有者がいる別荘と言うことです。

住宅難のハワイの空室率が高いのは?

 空室に何が含まれるかを理解すると、ハワイの空室率が高い理由が分かります。フロリダ州が全国6番目で、ハワイより高いのは、同じ理由だと思われます。実は、1位のバーモント州も、日本ではあまり有名ではありませんが、東部では人気があり、別荘が多いのです。

 オアフ島に限ってみると、空室率は9.2%しかなく、全国的にも低い方です。逆に、別荘市場なのになぜこんなに低いのだろうと疑ってしまうほどです。フロリダのように広くないオアフ島は、住宅難が深刻であることが一つの理由です。

 いつも大統領選で接戦になるフロリダ州と違い、ハワイは米国で最も民主党が強い州だと言えるかもしれません。民主党は、規制を好みます。具体的に詳しく規制を調べて比較するには膨大な時間がかかりますのでできませんが、住宅に関する規制は、ハワイの方が厳しく、それも住宅難の理由の一つかもしれません。

 もう一つ考えられることは、2019年の短期バケーション・レンタル規制です。一部のリゾート地域以外、短期のバケーション・レンタルができなくなりましたので、AirB&Bなどの利用が激減し、長期で賃貸されるようになりました。だとすると、この規制の効果が国勢調査の結果にも反映されているということになります。

 ではどんどん規制すればいいかと言うと、そんなことはありません。「アフォーダブル(お手頃)住宅政策がハワイの住宅供給に与えた影響」にも書きましたが、ハワイに限らず、住宅難の最大の理由は規制だと思います。

空室税?

3年後、ブリティッシュ・コロンビアの投機空室税の効果はあったか
(バンクーバー・サン、2021年11月14日)

 その規制をさらに増やそうとする動きがあります。2019年、カーク・カルドウェル前市長は、2018年にカナダのブリティッシュ・コロンビア(BC)で実施されたような空室税を提案しました。BC、特にバンクーバー市は、中国人投資家に人気で、空前のバブルだったのですが、それを抑えようとする規制でした。ホノルルでは、その時は通りませんでしたが、現在また市議会で検討中です。

 ところで、BCの投機空室税は効果があったのでしょうか。この税金は、投機目的、あるいは別荘や短期バケーション・レンタルとして利用されている物件にかかる税金です。カナダ抵当住宅公社(CMHC)の報告によると、2019~20年にかけて、賃貸物件が18,000戸増えたそうです。2020年は、新たに賃貸市場に出されたコンド7,137戸中、3,631戸が、元空き家でした。一見効果があったように見えますが、その原因はパンデミックで、AIRB&Bなどの短期バケーション・レンタルが減ったからではないかとも言われています。

 CMHCによると、バンクーバー市街地の家賃が下がったものの、現在貸しに出されている物件の貸出家賃は、既に貸されている物件の家賃よりも、21.4%も高いと報告しています。家の価格も高騰し続けていますが、これはバンクーバーだけではありませんので、当然かもしれません。

 この規制によって、多くの物件が一度に貸し出されて、いったん家賃が下がったものの、長期的には規制で新築が減り、家賃が高騰しているという見方もあります。バンクーバー市で同時期に空室税と外国人購入税が施行されましたので、BCの法律だけの効果を分析することは困難です。

 投機空室税によって、2020年は8,100万カナダドルの税収がありました。しかし、サイモン・フレージャー大学のアンドレイ・パブロフ財政学教授は、売買が減って譲渡税が減っていると指摘しています。

 BC州政府は、投機空室税の対象となる州民は1%もいないと述べていますが、この数はあまり意味がありません。大切なのは、州民の何%がこの税金を払っているかではなく、$8,100万の何%を州民が払っているかです。

 ホノルル・ボード・オブ・リアルターズは、当然この法律に反対するでしょうが、不動産屋も儲からなくなるので反対しているだけだと思われるだけかもしれません。個人的には、奢侈税(贅沢税)はいいと思いますが、空室税は高級物件でなくても対象になり、規制が増えるほど供給は減るかもしれないと、危惧します。

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ハワイの家の7戸に1戸は空き家:ホノルル市は空室税を検討中
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