チャイナタウンの再開発に関しては、去年のブログ、「ホノルル チャイナタウンの再開発」だけでなく、「パンデミック後のハワイにおける既存ビルのコンバージョン」や、「ホノルル、ダウンタウンのトレンド」でも触れました。今日は、主にホノルル・シヴィル・ビートの複数の記事をもとに、最近のチャイナタウンの大変貌について解説します。
チャイナタウンは、ホノルルのダウンタウンの西部にあります。歴史的に、貧しい移民が多い歓楽街なのですが、ここ数年、ホームレスに占領されてしまった感じでした。私たち夫婦は、まだ独身の次男とチャイナタウンのはずれのタワマンに住んでいます。わざわざここを選んだ理由は、息子がチャイナタウンからそう遠くないホームレス・シェルターで働いているからです。
ホームレスの増加につれ、治安も悪くなってきました。2021年のホノルル警察報告書によると、チャイナタウンの加重暴行事件は、2020年の63件から、85件に増え、35%の上昇です。加重暴行とは、女性や子どもに対する暴行など、刑を加重される重い暴行です。4月には、犯罪常習者が79歳の男性の後をつけ、背中にライターで火をつけたというショッキングな事件もありました。息子も、事件を目撃したり、被害者を助けたりしたことがあります。
窓ガラスを割られたり、落書きをされたりなどする事件は、日常茶飯事となりました。なんと、ホノルル警察チャイナタウン派出所さえ窓ガラスが割られたことがあります。割った40歳の女性は現行犯で逮捕。過去3年間に12回窓を割られたという店主によると、店の商品が盗まれたのは3回だけで、後はただの憂さ晴らしのようです。
そのチャイナタウンに大きな変化が起きています。その原因の一つは、ブランジアーディ新市長と、スティーブ・アルム検察官の政策です。もう一つは、35年にわたってチャイナタウンでホームレスの炊き出しなどをしていたリバー・オブ・ライフ・ミッションが、チャイナタウンからの移転に合意したことです。息子が働いているホームレス・シェルター、IHS(Institute of Human Services)もキリスト教の団体ですが、リバー・オブ・ライフは、私が属している教団も深くかかわってきた団体です。
大きな変化
麻薬や精神病などの問題を抱えたチャイナタウンのホームレスは、ピーク時には250人ほどいたと推定されていました。ダウンタウン・チャイナタウン町内会によると、今は50人ほどに減ったようです。
以前、ヌウアヌ川沿いのリバー通りは、麻薬売買、違法ギャンブル、売春でにぎわっていました。夜はホームレスが道の両側にびっしり寝ていましたが、今はほぼ見られなくなりました。ホノルル警察署と連携して月一度市民パトロールをしているグループも、その変化に驚いています。チャイナタウン・ビジネス&コミュニティー協会会長のシュバート・ウォックさんも同意見で、「希望がある」と述べています。
ブランジアーディ市長も貢献しています。彼は、就任当初からチャイナタウン改善を訴えており、2021年3月の一般教書演説でもその改革を訴えました。
その後、市は、地域における警察のパトロールを増やしました。
重要な契約
その中で結ばれたのが今回のリバー・オブ・ライフとの契約です。炊き出しを続けるべきかどうかは、政治的問題にもなっていたのですが、4月に、リバー・オブ・ライフがトラックを使った移動式の炊き出しに切りかえました。
リバー・オブ・ライフによると、この新しいアプローチは非常にうまく行っており、炊き出しをする場所にホームレスが集まるのではなく、ホームレスが集まる場所に食事を持って行くようになりました。チャイナタウンで炊き出しをしていた時は1日200食でしたが、現在は、市と協力しながら、300~325食に増えたそうです。
ポール・ゲイツ牧師によると、一か所でまとめてやるのではなく、移動式にすることによって、一か所の人数が減り、ホームレスと個人的な会話をする機会が増えたそうです。この2カ月で11人が社会復帰したとのことです。
しかし、全体的にみると、ホームレスは、いなくなったのではなく、移動しただけです。息子が働いているシェルターに近いイヴィレイの、$170万かけて作った27家族が住めるホームレス施設も、お役所の煩雑な規制に縛られて、いまだに機能していません。
チャイナタウンのホームレスをシェルターに入れるために2021年10月に作られたのが、市のCORE(Crisis, Outreach, Response and Engagement、危機、支援、対応、関与)というプログラムです。
ホームレスは、緊急でなくても、本人が自分で病院に行けない、あるいは目撃者が自分で助けることを躊躇して、救急車や警察を呼ぶことが多いのです。1年に百万ドル以上の医療費を使うホームレスもいるそうです。その仕事を、ソーシャルワーカー、救命士、コミュニティー・ヘルスワーカーにやってもらおうという試みです。911(日本の119と110を合わせたもの)への電話で、ホームレスに関するものは1日20~30件だそうです。救急医療を必要としないものをCOREに回し、医療以外のサポートもしようというものです。
まだ十分に機能していませんが、実は、息子もこのプログラムからリクルートされ、転職するかどうか、現在検討中です。
警察の動き
もう一つの新しい試みは、SUDA-FAST(薬物使用障害迅速評価)です。麻薬所持の重犯罪で逮捕された人が、本人、検事官、公選弁護人、裁判官の合意の下、薬物乱用予防プログラムに入るのです。既に115人の犯罪者がこれに参加しています。
また、ホノルル警察は、ウィード&シードと呼ばれるパトロール強化策を始めました。これは、スティーブ・アルム検事がハワイ州連邦検事であった1990年代後半に実施したもので、チャイナタウンやその西に隣接するカリヒの犯罪が3年間で70%も減ったという実績があります。ウィードは雑草、あるいは雑草を抜くという意味で、シードは種、あるいは種を蒔くという意味ですが、望ましくないものを除いて、そこに望ましいものを蒔くという意味です。
年中無休でチャイナタウンを徒歩で巡回するという案ですが、警官の労働組合は、警察官の数が足りないことを問題視しています。ホノルル警察は、現在警官が322人不足しており、193人の警官が引退できる歳です。町内会で追及されたブランジアーディ市長も、これを認めています。
ホノルル警察は、チャイナタウン・タスクフォースを設け、検事局と協力して、ウィード&シード・プログラムを進めています。これにより、告訴を迅速にし、保釈金も上げることができるようになったばかりでなく、ソーシャル・サービスを早く提供できるようになりました。
最後に
私は、去年の8月から松山の実家で99歳の母の世話をしていますが、米国から365日以上離れていると、永住権がなくなりますので、来月ハワイに一時帰国する予定です。チャイナタウンがどれだけ改善されたか、この目で確認できるのを楽しみにしています。
この記事を書いたデンディー・フォーセットさんは、他にもチャイナタウンのホームレスに関する記事をいくつも書いており、ここでも引用させていただきました。彼女は、当初、ホームレスに対する同情心から、彼らを追い出そうとしているチャイナタウンのビジネスに対して、憎悪感を持っていたそうです。しかし、調べていくうちに、そんな単純な問題ではないことを理解するようになったと述べています。何の理由もなく店に侵入して店主を襲ったり、店の中をめちゃくちゃにしたりされたのではたまりません。
私自身、持ち家をホームレス・シェルターとしてIHSに貸したこともありますし、同居している息子は、一人のホームレスのご老人をルームメイトにして、世話をしています。息子は、チャイナタウンは確かに良くなったが、ホームレスの問題が緩和されたかどうかは疑問だと言っています。チャイナタウンがきれいになることは大歓迎ですが、ホームレスの問題を根本的に解決しなければ、もぐらたたきゲームになるだけです。ここに紹介されたいろいろな新しい試みが、そのために役立つことを願っています。
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